銀座に来ないか

夜,いつものように木敢木覽(るう゛ぇ2階)のカウンター内でグラスを拭いていると,1階のお客さんが何人か上がってきて店内を見物。よくいる,同窓会館時代を懐かしんでおしゃべりするおじさまたち。

「昔はこんな天井じゃなかったし,こっちはこうであっちは……云々」
(社員さん(♀)を指して)
「あなた生まれてない頃だよね?」
(私を指差して)
「マスターも生まれてないよねえ?」

カウンター内にいただけで私がマスターに見えるなんてよっぽどお酔いなのね。


少しして,さらに別の人も上がってくる。しばらく店内を物色して。

(カウンターに並んだグラスを見て)
「ああ,よく磨いてピカピカにしてある。偉いねえ。こういうのが大事なんですよ。僕も昔Kmbのバーで働いてたことがあるんだけどね。ほら,今は冷蔵庫があるからいいけど,昔はでっかい氷をアイスピックで割らなきゃいけなかったんだよ,おかみさんには無理だからね。ふーん,E-maさんか。E-maさんってなかなかいい感じがするな。……銀座に来ない?いやあさ,銀座のママたちをね,まとめる役ってのがいないんですよ,うん。そういうのは年齢じゃないんだ。いかにまとめられるか,だからね。まあ今日いきなり来てこんなこともアレだから,また来ますよ。」

ここで自分が「銀座,ぜひ!!」と応えていたら,一夜にして銀座の帝王への道が開けていたのだろうか。グラスの前に立ってただけなのに。そう考えると人生わからないものだ。なんか半世紀前の小説にありそう。